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まとまった考えが浮かんだら書いています

初めてのジャズピアノ・ソロコンサート

フィリップ・ストレンジさんのジャズピアノ・ソロコンサートを聴いた。京都のとある一角、隠れ家のような地下空間(そういえばDresdenでもこういう場所でカフカの「変身」の舞台を見に行ったな。禿げた男(グレーゴル・ザムザ)と箪笥だけ。地元民とドイツ語に忍び込んだ奇妙な空間だった…)。

 

ジャズがあんなに繊細な音楽だとは思っていなかった。小さなホールに一握りのお客さんの、親密な空間。しかし、ただ親密であればよいのではない。フィリップさんはその親密さに「耐えうる」だけの繊細さをもって演奏した。彼は、演奏中ときおり顔を鍵盤に近づけて、目を閉じた。集中していた。しかし、自然だった。間近で演奏を聴くと、練習室で自分が演奏しているかのような、感覚の共有がおこった。そして、この上ない弱音のタッチが共有された!こういうピアノを弾きたい!

 

フィリップさんとお話しさせていただいた。クラシックはある時から演奏家と作曲家が分かれてしまった、これは不自然だ。私はジャズとクラシックの手をつなぎ合わせたい、というようなことをおっしゃっていた(ジャズの演奏家はクラシックをよく勉強するそうだ。何たる私の無知!)。もっともだ。これに私の考えを付け加えるなら、要するに、大事なのはジャンルや即興/作曲の区別ではなくて、「今まさにその場で音楽が生まれている」という感覚を持って演奏することなのではないか。音を手の中におさめて、一つ一つを確かめるように弾いてみせよ。テンポに追われるのではなく、テンポを「つかんで」、そこに音楽を息吹かせてみせよ。音楽はかくも楽しい!